オフショア開発とはシステム開発やソフトウェア開発を海外の企業または海外子会社に委託することです。最近では日本国内のエンジニア不足とコスト削減のために注目を集めている開発手法です。スマホのアプリやゲーム開発においてもオフショア開発は盛んにおこなわれていますが、すべての企業がオフショア開発を成功しているわけではありません。言葉や文化が違う海外の企業と一緒に仕事をするわけですから、さまざまな問題にぶつかってしまいます。
ここではオフショア開発でゲーム開発設計をする際に、重要なポイントををご紹介したいと思います。
ゲームの仕様書がオフショア開発の成否を決める!
オフショア開発でゲームの開発をする際の、一番のポイントはどれだけ仕様書をオフショア企業に理解してもらえるかという事です。
日本国内で開発する場合はゲーム開発についての基本的な要望は記載していますが、細部までは記載されないことが多いです。それはプログラムを作成するのは日本人で、なおかつエンジニアとしてのスキルを持っている人なので、ある程度の説明を記載すると、細かいニュアンスは読み取ってもらえるだろうというのを前提で作られているのがほとんどだからです。
また同じ国内にいるので時差を気にせずにコンタクトを取れますし、言葉が通じるので説明も簡潔に済みます。
しかし海外にゲーム開発を依頼するとなると、そうはいきせん。
まずプログラムをするのは外国人で日本語は通じませんし、相手のスキルがどの位なのかもわからない上に、日本人ならわかる微妙なニュアンスなども理解できないでしょう。そのためにこちらの意図をわかりやすく明確に相手に伝えなければいけません。
残念ながら、オフショア向けの仕様書というものはなく、そのため仕様書は出来るだけわかりやすく、全てのケースを想定した内容を記載する必要があります。オフショアでは仕様書がかなり重要になり、仕様書の判読性が高くなると仕事の効率や完成度がグッと上がってきます。
仕様書を詳細に描くには時間が掛かりますが、こちらの依頼通りの品質の良いものを完成させるには仕様書の判読性の高さは必要不可欠です。
わかりやすいゲームの仕様書とは?
ゲームの仕様書とは完成したゲームがどのようなゲームになるのかを示す言わば設計図のようなものです。
オフショア企業は依頼された仕様書を元にゲームをプログラミングしていきます。仕様書には日本で企画されたゲームを、書面上で見せ方やキャラクターの動きや反応やタイミングなどのゲームを組み立てるためのすべてを記載して、説明します。またゲームを進めていく上でのコツやテクニックも記載して、ゲームの中で起こりうる可能性全てを記載しなければなりません。
仕様書がしっかりと出来ていないと、記載されていないことがゲーム内で起こると対応できず、最悪の場合は一から作り直しになり、そうなると時間やコストの無駄になってしまいます。仕様書をわかりやすく作成するためにはいくつかのポイントがあります。
・表や図やフローチャートでわかりやすく記載する
ゲームの内容や細かい動きを言葉や文章で説明してこちらの意図を完全に伝えるのは難しいです。
ましてや相手は外国人ですので言葉だけで理解してもらうのはかなり難しいでしょう。表や図を活用して、誰が読んでもわかりやすい仕様書を作成することをお勧めします。
・キャラクターや画面の動きをしっかりと明記する
画面間の移動や各ボタンの動きついてはしっかりと明記してください。
よくあるのが、何かを登録してそれをキャンセルした場合にキャンセルした後にどんな画面が表示されて、次にどの画面に行くかは日本人の感覚と外国人との感覚が違うことが多いので、どのようにして欲しいのかしっかりと明記しましょう。
・仕様書に書き漏れを防ぐ
仕様書に書き漏れが出てくると、その場面に当たった時に現場の人間はどうすればいいのかわからなくなります。
そうなれば日本に指示を仰いでその返事待ちに時間がかかりますし、場合によっては勘違いをしてそのまま作業を続けてしまう場合もあります。
書き漏れを防ぐためにも重要なことを最初にメモとして観点を書いてから、仕様書を書き始めると書き漏れに役立ちます。
ブリッジSEの重要な役割
ブリッジSEとはオフショア開発で日本企業とオフショア企業を繋ぐエンジニアのことをいいます。
ブリッジSEはオフショア企業国の言葉や文化・習慣を理解して、円滑に業務を勧められるように指示し調整をするエンジニアのことで、両国を繋ぐ橋のような役割をしていることから「ブリッジSE」と呼ばれるようになりました。ブリッジSEは日本とオフショア企業とのパイプ役で、エンジニアとしてのスキルはもちろんのこと、コミュニケーション能力や語学力・マネジメント能力が必要になってきます。
ブリッジSEの仕事は文化や習慣・ビジネスマナーが異なるオフショア企業と日本企業との間に立って総合的なサポートをします。なので、エンジニアとしての技術だけではなく、コミュニケーションを取りやすい開発環境を作ることも重要な仕事です。オフショアでゲームの開発をする場合は、明確な仕様書と優秀なブリッジSEのこの存在の二つのポイントを抑えるだけで業務がスムースになり、お互い仕事がしやすくなります。
あとは、オフショア企業と日本企業の双方がしっかりとコミュニケーションを上手く取れるようになると成功する確率がかなりの確率で高くなります。オフショアの失敗のほとんどが、仕様書の理解不足により依頼したものとは違うものが出来てきた、もしくは作り直しによって時間とコストがかかってしまうこと。他には現地のエンジニアと日本企業とのコミュニケーション不足で作業に時間がかかってしまうことです。
オフショアでのゲーム設計で気を付けたいポイント
オフショアでゲーム開発設計をするにあたって、仕様書とブリッジSEがポイントになることは先ほどお話いたしましたが、その他にも重要なことがあります。
・契約書の内容
オフショアでゲーム開発を依頼して、出来上がったものがこちらの仕様書通りでなく、要求事項を満たしていない場合には支払いを拒否すると言うことを契約書に記載してください。中には要求事項を満たさない場合でも程度に応じて支払うと記載している契約書を見ますが、
そうなるとゲームのプログラムが半分しか出来上がっていないのに、中途半端なプログラムを納品されて半分の金額を請求されても、契約書に記載されているのであれば支払わなければなりません。
そうなると作り直しをしなくてはいけないので余計にコストがかかります。
最悪の場合は裁判になったとしたら契約書の内容は重要になってきますので、必ずしっかりと確認してください。
・オフショア企業にどの工程を任せるのか?
取引の短い企業や初めてオフショアを依頼する企業にはすべての工程を任せるにはリスクがあります。
始めのうちは基本設計や詳細設計のゲーム開発の指針となる上流工程は日本で行い、プログラミングやテストなどの下流工程を依頼し、そこで問題がなければ徐々に上流工程を依頼するようにしましょう。
依頼した品質の良さや、要求事項をきちんと満たされているかなどをしっかりと確認してください。
オフショアでのゲーム開発設計で重要なことはオフショア企業に依頼内容が明確に伝わる仕様書と現地と日本企業を繋ぐ優秀なブリッジSEの存在が不可欠です。そして日本企業側もブリッジSEに丸投げせずに現地と頻繁にコミュニケーションを取るようにして、作業内容や進歩状況を確認することが重要になります。言葉や習慣の違う相手との取引には、日本の常識は通用しません。
摩擦や問題を避けるためにもお互いが相手を理解しようと思う気持ちが大切だと思います。