半数以上の企業が3割コストダウン!ゲームをオフショアで開発しよう

近ごろ、「オフショア」という言葉をあちこちで見かけるようになりました。本来はサーフィンで「オンショア」の反対語として使われているオフショアですが、IT業界では海外へのアウトソーシングのことを「オフショアリング」と呼んでいます。
ベトナムやインド、ミャンマーなどといった国では日本国内よりも安い賃金で仕事をこなすエンジニアが急増していますが、物価の差をうまく利用してシステムなどの開発を外国に外注するのがオフショアリングというわけです。
ここでは特にオフショア開発が多いソーシャルゲームを中心にオフショアの現状を見ていきましょう。

ソーシャルゲームとは

まず「ソーシャルゲーム」がどんなものか今ひとつ把握できていない方のために簡単な説明をしていきます。ソーシャルゲームという言葉はよく耳にするけれど、何がソーシャルなのかわからないという人は割と多いようです。
ひと昔前まではパソコンで遊べるゲームがたくさんありましたが、最近はスマホ全盛の時代です。それに伴って、スマホで遊びやすいゲームに人気が集中する傾向があります。
中でもソーシャルゲームは基本的に無料で遊ぶことができますから、課金などを気にせずに誰でも楽しめると言う点が大きな魅力となっています。ソーシャルゲームが基本的に無料で提供されているのは、プラットフォームがSNSだからです。
mixiやFACEBOOKなどといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では最初に会員登録を行わなければなりません。同じSNSに登録している会員同士であればアバターでゲームを楽しんだりすることができるようになります。ゲームの中ではSNS友達と協力したり競い合ったりして遊ぶことができるわけです。
モバイルで世界最初にソーシャルゲームを公開したのはGREEです。GREEでは2007年に人気ゲームの「釣り★スタ」を公開してから、さまざまなゲームを生み出しています。MOBAGE(旧称:モバゲータウン)もGREEと並んで日本では有名なSNSですが、2009年に発表した「怪盗ロワイヤル」でヒットし、その後も順調な伸びを見せています。2010年からはヤフーと共同で「Yahoo!モバゲー」の運営も開始しています。

オフショア開発で3割のコストダウンに成功

オフショア開発が関係企業から注目を浴び始めたのは2013年ころからのことです。スマートフォンのユーザーが劇的に増え、ソーシャルゲームなども急速に普及したためにエンジニアに対する需要も高まりましたが、国内では十分な数のエンジニアを確保できないという状況が出現したのもこのころです。
そういった状況からオフショア開発が急に加速することになります。海外の事業者にソーシャルゲームの開発を依頼する、あるいは海外の子会社に仕事を委託することによって開発コストを抑え、利益を上げるというのがオフショア開発の基本方針です。
「IT人材白書」によればオフショア開発を委託している日本のシステムインテグレーターのうち、半数以上は3割ほどの経費削減が達成できているという結果が出ています。
オフショア開発の委託先は中国がトップで、以下ベトナム、インド、フィリピンと続いています。このうち中国に関しては物価が上がっているためにコストダウンが効率よく行なえないというデメリットがあります。その反面、ベトナムは物価の点でもまだ日本との違いがあり、しかも国民性の点では共通点も多く理解がしやすいということで今後もベトナムにおけるオフショア開発に期待が持てそうです。また、同じオフショア開発でも「ラボ型開発」という手法を使えば開発コストをさらに78%程度までダウンすることも可能です。ラボ型開発というのは企画ごとにチームを形成するのではなく、専属のチームを抱えて仕事を委託するという方法です。これならノウハウも蓄積していきますので仕事のクオリティも当然高くなります。

新しい概念のオフショア

ソーシャルゲーム業界は全般に売り上げが伸びているにもかかわらず、国内のソーシャルゲームに特化したエンジニアはあまり増加していません。ソーシャルゲームの開発に関してはベトナムなどをオフショアリングの場として活用している日本企業が非常に多いというのがこの業界の現状です。
例えばスマホ向けの数々のゲームを企画・開発しているフリーバル エンターテイメント(Freebal games)では2017年9月にオフショア・ゲームスタジオをベトナムに設立しています。
ハノイとホーチミンにオフィスを構えるPunch Entertainmentと日本のゲームクリエイターが融合した形で 出来あがったこの新しい試みは次世代のオフショア・ゲームスタジオとして注目を浴びています。同スタジオではリリースが既に終了しているゲームや途中で中止になったゲームを引き継いで提供する事業も行うなど、これまでにない独自の活道を行っているのが特徴です。
これまではオフショアリングというと日本がリーダーシップをとって労働力の安いベトナムでコストを抑えた開発をするという図式が一般的でした。つまりオフショアの最大目的はコストダウンにあったわけです。ところがベトナムのエンジニアが安定したハイクオリティの仕事を提供する環境が整った今、ベトナムを単なる海外アウトソーシングの請負先ではなくて共同開発を行えるパートナーとして見直す風潮が出てきました。
今後は日本側とベトナム側が対等の立場で推進していくプロジェクトが増えていく事が予想されます。

オフショアでコストダウンを図るには

オフショア開発を行っている会社のうちの半数以上は3割程度のコストダウンに成功していますが、その一方でコストダウンの恩恵をほとんど受けていない企業というのも存在します。オフショア開発に着手したけれど実質的な利益はほとんど出ていないという企業も1割ほど存在するのです。
とにかくオフショア開発をやればうまくいくと考えるのは甘い話で、やはりプランをよく練ってからオフショアリングに取りかかることが大切です。
オフショア開発を成功させるためには、やはり現地スタッフをよく吟味することが成功につながります。他国に仕事を委託するとなるとエンジニアとしての能力はもちろんのことですが、生活習慣や宗教、国民性なども把握しておかないとうまくいきません。
言葉の違いからコミュニケーションがうまくいかず、指定した仕様とは異なるソーシャルゲームが納品される危険性もなきにしもあらずです。オフショア開発においては日本と委託先のエンジニアとの橋渡しを行う「ブリッジエンジニア」というものが存在します。このブリッジエンジニアの手腕によっても仕事の成果は大きく左右されてくるわけですから、優秀なブリッジエンジニアを確保することもローコストで仕事のクオリティを上げるための重要な鍵となります。
さらに、言葉や習慣、仕事に対するメンタリティは違うといっても現地のエンジニアは委託した仕事をこなしてくれる大切なパートナーなわけですから、感謝の気持ちをこまめに伝えるといった心配りも忘れないようにしたいものです。

日本にも優秀なエンジニアはたくさんいるのになぜわざわざオフショア開発をするのかという意見が国内にないわけではありません。しかし、日本ではゲームプログラマーが慢性的に不足しているという現実があります。
システム系のプログラマーとゲームのプログラマーとでは必要とされるスキルが異なるのがその原因です。システム系プログラマーとして経験を重ね仕事をしてきた人が明日から急にソーシャルゲームのプログラマーになるというわけにはいかないのです。ゲームを実際にやって、その面白さを熟知している人でなければゲームのプログラミングではかなり苦労することになります。

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