課題は山積み?オフショア開発失敗の原因!4つの課題を徹底解説!

圧倒的なコストダウンができることを理由にオフショア開発を行う企業は、ここ数年非常に多くなりました。確かにコスト(人件費)を大幅に下げられるというメリットはありますが、その一方でオフショア開発を成功させるうえでいくつかの壁が存在することも忘れてはいけません。
言語の違いによるコミュニケーション不足、労働意識の違い、文化・習慣の違いなどが要因となってリスクが発生してしまうケースが多々あります。
問題が起きてから対処するよりも、事前にオフショア開発における課題を整理し、初めから対策を打っておくことが大切になります。

オフショア開発における言語の壁

オフショア開発において最初の壁となるのはやはり言語の問題です。プログラミング言語そのものは世界共通なのでその点は心配ありませんが、ブロダクトの内容や仕様を説明する際は日本語で書かれたものを現地のエンジニアに説明する必要があります。
プログラミングやシステム開発の仕様書は日本語であっても理解するのに一苦労な部分が多いですから、それを現地語に翻訳して説明するとなると余計に誤解が生じやすく本来の設計とは違ったものが出来上がってしまう危険性があります。もしも間違ったまま案件が進行するとそれは炎上案件と化してしまうでしょう。
近年はどこの国とのやり取りであっても英語での意思疎通が一般的になりつつあります。仕様書や会話において英語で意思疎通できれば間違いが起きるリスクは多少下がりますが、現地語オンリーでの意思疎通となると注意が必要です。ひとつ間違うと意思疎通に時間がかかりすぎて、膨大なコミュニケーションコストが生じてしまいます。
このような言語の問題を解消してくれる存在として「ブリッジSE」があります。ブリッジSEとは、日本語や日本のビジネスマナーを理解している外国人システムエンジニアのことで、日本と現地の意思疎通を的確に行うためにいわば「橋渡し=ブリッジ」の役割を担う存在です。単なる翻訳業務のみならず、会議中の通訳、両国間におけるプロジェクトの管理、報告、テストなど数多くの業務を担当します。ビジネスレベルの日本語とSE特有の言語を同時に扱うという高度な職種であり、その多くは日本への留学経験者や日本の企業で実績を積んでいる外国人です。
ブリッジSEをサポートする役割として「コミュニケーター」という職種もあります。その名のとおり日本語を習得している通訳者のことを指しますが、SE特有の仕様書やテストレポートなどを翻訳できるスキルが必要になります。ほかにも会議や日常の会話における通訳や翻訳業務を担います。
こうした優秀なブリッジSE、コミュニケーターを採用することが言語の壁を乗り越えるひとつのポイントとなるでしょう。

文化、法律、政治の壁

国によってその国民性、習慣、文化は大きく異なります。「日本的な考え方」「日本ではあたりまえのこと」をそのまま持ち込んでも、他国では通用しないことが多々あります。
日本人には日本人特有の気質があるように、ベトナム人、インド人、中国人などそれぞれの人種によって気質が異なります。例えば東南アジア系の人々は日本人に比べると時間にルーズなところがあって仕事が終わっていないのに帰る・・・なんてことはよくありますし、日本人同士なら「そんなことは常識だろう」と思えることが通じないことがあります。技術面においては特定のアルゴリズムをまとめるのが苦手とか、文化的違いから仕様書の真意を誤解して勝手に仕様を変えてしまうといったことも起こりがちです。
しかしながら、なんでもかんでも相手の失敗や至らない部分を責めているとオフショアメンバーのプライドを傷つけ、仕事以前に人間関係そのものがダメになってしまいます。そのため文化的・気質的な違いを最初に理解してある程度の寛大さを持つこと、異国の人々の国民性を事前に勉強しておくことが大事です。
もうひとつ注意すべき点は両国間の政治的影響です。中国や韓国とのやり取りでは、時として両国関係が悪化して反日デモが過激化したりすると事業は進みにくくなります。その国単体の政治的な不安定さや国内事情がオフショア開発に悪影響を及ぼすこともあります。また、それぞれの国によって法制度が異なりますから、その点もあらかじめ深く理解しておかないとリスクを高める要因となります。

国による労働意識の違い

これは上述した文化や気質の違いにも通ずることですが、日本人の労働意識と外国人の労働意識は異なります。この相違によって生じるのは、作業の遅延、品質管理能力の低下、そして最も危惧すべきは納期の遅れです。労働意識の隔たりが大きいと納期日直前になって「できません」とあっさり言われてしまうことがあるのです。愕然としますが、これが日本と海外との労働意識の差です。ほかにも“仕事の優先順位が間違っている”、“進捗状況を確認したら重要ポイントが共有されていなかった”など日本の労働意識との乖離がひとつの壁となります。
しかし、この点は日本側からの強い要求や努力によって解消することが可能です。少し時間はかかるかもしれませんが、とにかく「納期を守る」ということを徹底させ、なんどもなんども確認することで相手側の意識も変わってきます。
・品質に不安があるときは仕様書の内容を改めて向こうに説明してもらう
・頻繁に近況報告をしてもらう
・違和感があったらすぐにビデオ会議を実施する
・現地に適切な人材を常駐させる
・全行程で依頼しない
など、リスクを回避する方法はたくさんあります。オフショア開発を行う日本の企業のなかには、毎朝と毎夕に必ずビデオ会議を実施するところもあるようで、そのくらいの徹底したコミュニケーションはやはり必要でしょう。
日本人とは違い「あれ?なんか間違ったかな・・・でもまあいいや」で済ましてしまう外国人も多いので、そのあたりの労働意識のずれが甚大なリスクを生み出すこともあります。その点を考えると何か起こったときのリスクを最小限に抑えるために“最初から全行程の依頼はしない”というのは基本です。徐々に慣れ、安心できるようになったら依頼量を増やしていきましょう。

デザイン構築における壁

日本ではUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)の両方を考慮してデザインするのがあたりまえですが、東南アジア圏ではUXという概念はあまり浸透していないのが現状です。オフショア開発においてUXの部分を共有できないという壁がそこにあるわけです。よって最初からUXを加味した高度なデザインの依頼は難しいということになります。しかし、連携を強めていくなかでUXという概念が存在すること、そしてそれがデザイン構築においていかに重要であるかを現地SEと共有することができます。
・似たようなデザイン例(プロダクト例)を見てもらって感覚的にUXの概念を理解してもらう
・ビデオ会議でUXについての詳しい説明や講義を行う
・なんども繰り返しデザインを提出してもらってUXの精度を確実に上げていく
といった方法を行っていけばこの壁も乗り越えていくことができるでしょう。
この点もやはり現地人とのコミュニケーションの多さ、議論の多さ、大事なポイントの共有量の多さがカギを握ります。密度の濃いコミュニケーションこそオフショア開発成功の大きな要素となります。

これまでご紹介した課題を踏まえて考えると、オフショア開発は急にポンっと短期で実施するようなものではないということがわかります。課題を把握したうえで、あくまで長期的な視野に立って判断すべきです。
オフショア開発の実施を決定したら、まずは全行程でいきなり依頼するのではなくテストやレビューを含めて少しずつ依頼を行う、適切な品質管理やスムーズな作業進行のため日々のコミュニケーションを徹底する、働き方や労働時間について事前に合意しておく、国民性や気質について理解を深める―こうした土台があって初めてオフショア開発の成功の可能性は高まるでしょう。

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