【インドは要注意!】IT大国インドでオフショア開発する際の危機管理

【目次】
はじめに
インドにおけるオフショア開発の特徴
インドオフショア開発の危機管理
オフショア開発の重要なポイント
おわりに

はじめに

日本の企業によるオフショア開発では、日本から近いことが国選びにおいて重視されるため、かつては中国などの特に日本に近い国が選ばれることがほとんどでした。しかし、近年では中国の経済発展に伴って、中国以外のアジアの国々へ目が向けられるようになり、さまざまな国でオフショア開発が行われるようになっています。
インドもまたオフショア開発を行う地として選ばれることが多くなった国のひとつですが、東南アジアの国々に比べて条件が大きく異なるインドでのオフショア開発では、独自の危機管理体制が必要となっています。
今回はそんなインドオフショア開発の特徴や、インドでのオフショア開発に必要な危機管理体制について解説します。
インドでのオフショア開発を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてみてください。

インドにおけるオフショア開発の特徴

まずはインドにおけるオフショア開発の特徴についてみていきましょう。

人材が選び放題

インドならではの特徴に着目してみると、人口が多いため優秀な人材が多いという点が特に際立っていることが分かります。そのため、インドでのオフショア開発を行う多くの日本企業は、優秀な人材を見つけるための手間を省くことや、より多くの人材を確保することをオフショア開発のメリットとして重視しているといえます。

IT大国インド

近年特に多くなっているIT業界におけるオフショア開発に関して、インドではバンガロールのようなIT産業の中心地があるため、世界中のIT業界で活躍できるレベルの優秀な人材を確保できるという点で大きなメリットがあります。このことから、インドはIT系企業にとってオフショア開発の地として選ぶメリットが特に多いという特徴もあり、現在では多くの日本のIT系企業が実際にインドでオフショア開発を行っています。

下流工程のオフショア開発には不向き

一方、人材が多いという点はかつての中国に似ているため、製造業のような実際に現場で働くスタッフに高度な技術が求められない業種にとっても、インドはオフショア開発の地として選ぶ価値があるようにも思えます。しかし、インド人エンジニアの人件費は安くなく、システム開発の下流工程を委託するだけでは、かえって渡航費や滞在費がかさみコストメリットを出せないことも充分考えられます。
委託する業務や、事業規模などをふまえた上で、慎重に委託先を検討しましょう。

インドオフショア開発の危機管理

オフショア開発を行う主な目的としては、優秀な人材を確保するだけでなく、コストを削減することも挙げられます。
システム開発費のほとんどは人件費が占めるため、人件費の安い国へ開発業務を委託することで開発コストを大幅にカットすることできるという点がオフショア開発の魅力ですが、実はインドでは大幅なコスト削減は見込めません。
なぜなら、インドの人件費は日本のエンジニアの人件費とさほど変わらないからです。現時点で東南アジアの国々の人件費は日本の10分の1程度であることも珍しくないことから、その水準の高さは特段際立っているといえます。

インドでオフショア開発をする目的を明確に!

人件費が高くつくにもかかわらず、インドがオフショア開発の地として選ばれているのはなぜでしょうか。
それは、IT業界を中心に特に優秀な人材がインドから輩出されているためです。
インド工科大学は世界最高峰の理系大学ともいわれ、その合格率はわずか1%と言われています。インド工科大学出身のエンジニアの中には、グーグルCEO のサンダー・ピチャイ氏や、元ソフトバンク副社長 ニケシュ・アローラ氏のような大企業のエリートも沢山おり、いまやインドは世界を代表するIT大国になろうとしています。
そんなインドにオフショア開発をしている国内企業は、「自社の開発リソースが不足しているので、多少費用がかかっても優秀なエンジニアを雇いたい」「世の中にない新たなシステムをインドのエンジニアとともに開発したい」といった目的をもって業務委託をしているところがほとんどです。
インドでオフショア開発をする際には、何をオフショア開発の目的とするのかを明確にしてから検討しましょう!

地理的な危機管理が必要

日本の企業がインドでオフショア開発を行うにあたって大きなハードルとなるのが、インドが日本から若干離れた場所にあるということです。これにより、例えば東南アジア諸国は時差が1~2時間しかないのに対し、インドの場合は3時間半の時差があることから、電話やメール、スカイプなどを利用した連絡がスムーズに行えないこともありえます。
よって、特に緊急時などにはこの時差が大きな危機を生み出す危険性を秘めており、意思の疎通をスムーズに行うための連絡方法や、連絡のルール化(返信は24時間以内にするなど)をあらかじめ決めておくことは、基本的な危機管理として求められます。

インド人の国民性

文化的な特徴から問題になることが考えられるのが、インド人の国民性です。IT業界において優秀な人材が多く輩出されていることからも分かるとおり、インド人は一概にはいえないものの勤勉であることが多く、仕事そのものに対してはまじめに取り組んでもらうことが期待できます。
しかし、その反面で時間にルーズであるという国民性が指摘されることも多く、こちらが指定した時間に業務を行ってもらえないという問題が発生することもあるかも知れません。

以上のことから、今後インドでのオフショア開発を検討している企業のなかで、「コストを削減する」というオフショア本来の目的を掲げている企業にはオフショア開発委託先としてインドは不向きです。
また、地理的・文化的な面からも事前に徹底した危機管理が求められます。
「他国と比較して本当にインドでなくてはならないのか?」という意識を常に持ち、慎重に委託先を検討することが必要です。

オフショア開発の重要なポイント

以上のように、インドでのオフショア開発は、インドだからこそ起こりうるさまざまな問題がつきまといます。
しかし、インドには世界的にみても優秀なエンジニアが多いため、インドでオフショア開発を行わなくてはならない企業も数多く存在します。そのため、そのような企業にとってはオフショア開発に伴って発生しうる問題を回避するのではなく、それを解決する術を危機管理のひとつとして会得しておくことが重要になります。

信頼関係を築く

より多面的な意味での危機管理として特に有効なのが、とにかく根気強く交渉を行い、信頼関係を築いていくという方法です。
とりわけ自我が強く、ビジネスシーンでは自己主張をすることが得意だといわれるインド人は、交渉力が未熟で自己主張が得意ではない日本人と相性が合わないことも多く、オフショア開発がスムーズに行えないということも少なくありません。
このような問題を解決するためには、十分な交渉と厚い信頼関係を築くことが重要であり、そのためには交渉力の優れた社員を現地へ派遣するといったことも危機管理としては有効といえるでしょう。

おわりに

インドは国内での人件費が高騰したことや人件費の安い東南アジア諸国で優秀な人材が育成されるようになったことから、徐々にオフショア開発には適さない国になりつつあります。しかし、IT業界のようにインドだからこそオフショア開発を行う意義がある業界も存在することから、今後も日本企業によるインドでのオフショア開発がなくなることはしばらくの間はないでしょう。
一方、インドでのオフショア開発ではインドならではの国民性や地理的な特徴が大きな危機を生み出す可能性も秘めているため、それらを理解することはこの国におけるオフショア開発での危機管理の第一歩になるといえるでしょう。
オフショア開発の委託先としてインドを検討している方は、ぜひ入念な危機管理をするようにしましょう!

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